防火対象物
そもそも防火対象物って何でしょうか?
これは建物から船、山林までいろいろなものを意味する言葉として消防法に定義されています。実際の定義は下記消防法2条に書かれています
第二条 この法律の用語は左の例による。
消防法
② 防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。
③ 消防対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件をいう。
④ 関係者とは、防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者をいう。
⑤ 関係のある場所とは、防火対象物又は消防対象物のある場所をいう。
⑥ 舟車とは、船舶安全法第二条第一項の規定を適用しない船舶、端舟、はしけ、被曳船その他の舟及び車両をいう。
⑦ 危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。
⑧ 消防隊とは、消防器具を装備した消防吏員若しくは消防団員の一隊又は消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号)第三十条第三項の規定による都道府県の航空消防隊をいう。
⑨ 救急業務とは、災害により生じた事故若しくは屋外若しくは公衆の出入する場所において生じた事故(以下この項において「災害による事故等」という。)又は政令で定める場合における災害による事故等に準ずる事故その他の事由で政令で定めるものによる傷病者のうち、医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを、救急隊によつて、医療機関(厚生労働省令で定める医療機関をいう。第七章の二において同じ。)その他の場所に搬送すること(傷病者が医師の管理下に置かれるまでの間において、緊急やむを得ないものとして、応急の手当を行うことを含む。)をいう。
なお、「防火対象物」と「消防対象物」は違いますのでご注意を!

「防火対象物」と「消防対象物」の違いと覚え方は別の記事を見てください
消防用設備等の設置義務がある防火対象物
消防設備士は消防用設備等の設置、点検などを行うのですが、そもそも、どのような「防火対象物」にそのような消防用設備を設置する必要があるのでしょうか?
その基準は消防法第17条 第1項に定められています。条文は下記のようになっており、政令で定める防火対象物には、政令で定める消防用設備等を設置することが義務付けられています。
第十七条 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。
消防法
この条文では例としていくつかの防火対象物が書かれていますが実際には別表で詳細に定められています。別表はページ最後に乗せているので確認してください。
ここで大事なことは消防用設備等の設置義務は「用途で決まる」ということです。大きさや広さは無関係です。ですから、どんなに広い豪邸でも設置義務はありません。この点は試験に出ることがありますので要注意です。
特定防火対象物
防火対象物がさらに、「特定防火対象物」と「一般防火対象物」に分類されます。
「防火対象物」は消防法17条の2の5 第2項 第4号に「百貨店、旅館、病院、地下街、複合用途防火対象物(政令で定めるものに限る。)その他同条第一項の防火対象物で多数の者が出入するものとして政令で定めるもの」と書かれています。念のため、条文は、こんな感じ。
第十七条の二の五 第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令若しくはこれに基づく命令又は同条第二項の規定に基づく条例の規定の施行又は適用の際、現に存する同条第一項の防火対象物における消防用設備等(消火器、避難器具その他政令で定めるものを除く。以下この条及び次条において同じ。)又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の同条同項の防火対象物に係る消防用設備等がこれらの規定に適合しないときは、当該消防用設備等については、当該規定は、適用しない。この場合においては、当該消防用設備等の技術上の基準に関する従前の規定を適用する。
消防法
② 前項の規定は、消防用設備等で次の各号のいずれかに該当するものについては、適用しない。
一 第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令若しくはこれに基づく命令又は同条第二項の規定に基づく条例を改正する法令による改正(当該政令若しくは命令又は条例を廃止すると同時に新たにこれに相当する政令若しくは命令又は条例を制定することを含む。)後の当該政令若しくは命令又は条例の規定の適用の際、当該規定に相当する従前の規定に適合していないことにより同条第一項の規定に違反している同条同項の防火対象物における消防用設備等
二 工事の着手が第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令若しくはこれに基づく命令又は同条第二項の規定に基づく条例の規定の施行又は適用の後である政令で定める増築、改築又は大規模の修繕若しくは模様替えに係る同条第一項の防火対象物における消防用設備等
三 第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令若しくはこれに基づく命令又は同条第二項の規定に基づく条例の規定に適合するに至つた同条第一項の防火対象物における消防用設備等
四 前三号に掲げるもののほか、第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令若しくはこれに基づく命令又は同条第二項の規定に基づく条例の規定の施行又は適用の際、現に存する百貨店、旅館、病院、地下街、複合用途防火対象物(政令で定めるものに限る。)その他同条第一項の防火対象物で多数の者が出入するものとして政令で定めるもの(以下「特定防火対象物」という。)における消防用設備等又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の特定防火対象物に係る消防用設備等
要は、「多数の者が出入する防火対象物」として定められているものということになります。ここで書かれている「多数の者」とは「不特定多数」と理解してよさそうな感じです。ですから、「不特定多数の人が出入りするような防火対象物」は、特に火災対策が必要なので「特定防火対象物」となるわけですね。
で、消防法17条の2の5 第2項 第4号では、詳細は「政令で定める」ことになっており、これは、消防施行令第34条の4 第2項となります。
それがこちら
(適用が除外されない防火対象物の範囲)
消防法施行令
第三十四条の四 法第十七条の二の五第二項第四号の政令で定める複合用途防火対象物は、別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物とする。
2 法第十七条の二の五第二項第四号の多数の者が出入するものとして政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち、百貨店、旅館及び病院以外のものとする。
つまり、
- 1:映画館など
- 2:ダンスホール、カラオケボックスなど
- 3:飲食店など
- 4:百貨店など
- 5:旅館、ホテルなど
- 6:病院など
- 9:サウナなど
- 16:特定防火対象物を含む場合、地下街
が該当します。
ここで条文を読むときの注意ですが、消防法施行令では「百貨店、旅館及び病院以外」となっています。ということは「特定防火対象物」に百貨店、旅館、病院は含まれない!?
実はそうではなく、消防法で「百貨店、旅館及び病院に加えて政令で定めるもの」と定められているので、政令からは除いているのです。ですから、当然、「百貨店、旅館及び病院」も入ります。
特定防火対象物の覚え方
数が多くて、ややこしいので、覚えるのが大変ですが、これを覚えていないと解けない問題が出ますので、しっかり覚えましょう
不特定多数が出入りしない場合は該当しない
「不特定多数の人が出入りするような防火対象物」は、特に火災対策が必要なので「特定防火対象物」となるのでしたね。
寄宿舎、下宿又は共同住宅
「寄宿舎、下宿又は共同住宅」はホテルと同じ5項に入っています。しかし、共同住宅ですから、住民の出入りだけですね。基本的には。

共同住宅は住民しか出入りしないので一般防火対象物
工場、映画スタジオ
イメージでは「工場又は作業場」、「映画スタジオ」では、危険なものを扱っていて火事に消防設備等が設置義務となっているように思うかもしれません。しかしこれらは普通の会社なので、不特定多数が出入りしないので該当しないと考えましょう。

工場や、映画スタジオは社員がメインでいろいろな人が出入りしないので、
一般防火対象物
幼稚園 VS 学校 VS 老人ホーム
これはややこしいですね~
小さな子供が通う幼稚園、子供から大学生までの学校、お年寄りの老人ホーム。どれも不特定多数が出入りするような場所ではありませんね。
しかし、幼稚園と、老人ホームは非難が大変そうです。ですので、これらは特定防火対象物となります。老人ホームは病院と同じくらい非難が難しいイメージがありますよね~

不特定多数が出入りしないが、幼稚園と老人ホームは非難が難しいので
特定防火対象物
図書館 VS 映画館
これもややこしいです。結論的には
映画館:特定防火対象物(劇場、演芸場又は観覧場、公会堂、集会場などを含む)
図書館:一般防火対象物(図書館、博物館、美術館)
となります。理由はよくわかりませんが、私は「静まり返った誰もいない図書館」を思い浮かべて覚えました。人がいないので、対策はいらないということで。本当の理由ではなくても覚えることが重要ですからね~

神社、寺院、教会、重要文化財等
これもよく問題に出ます。
神社やお寺は不特定多数が出入りしそうですから特定防火対象物のように思いますが、実際は一般防火対象物です!だいぶイメージと違いますね~
とりあえず、これらは建物の外でお参りしたり、外から建物を見たいすることが多いですね。ですから、「建物に入らないから消防設備はなくても良い」と覚えました。

公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの
最後にこちら
- 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの:特定防火対象物
- その他の公衆浴場:一般防火対象物
公衆浴場って、銭湯とか温泉?なんで2つに分かれているの?って混乱しました。そもそもお風呂はお水がたくさんあって、火事担いにくいのでは?と思えますよね。
実は、蒸気浴場とはサウナのことで、室内で火を焚いて上記を出すタイプをイメージしてください。そうです。屋内で火をたくので、火事になるかもしれません。ということで、こちらは特定防火対象物になります。それ以外の一般的なお風呂は一般防火対象物です。

まとめ
ということで、いかがだったでしょうか?防火対象物は以下のように分類できます。
- 防火対象物
- 消防用設備等の設置義務がある防火対象物
- 特定防火対象物
- 一般防火対象物
- 消防用設備等の設置義務が無い防火対象物
- 一般の家など
- 消防用設備等の設置義務がある防火対象物
消防用設備等の設置義務がある防火対象物は下の表にまとめていますので、確認してみてください。色が付いているところが特定防火対象物ですので、しっかり覚えてください。
項 | 防火対象物 | |
1 | イ | 劇場、映画館、演芸場又は観覧場 |
ㇿ | 公会堂又は集会場 | |
2 | イ | キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの |
ㇿ | 遊技場又はダンスホール | |
ハ | 風俗営業店舗等 | |
二 | カラオケボックス、インターネットカフェ、マンガ喫茶等 | |
3 | イ | 待合、料理店その他これらに類するもの |
ㇿ | 飲食店 | |
4 | 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場 | |
5 | イ | 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの |
ㇿ | 寄宿舎、下宿又は共同住宅 | |
6 | イ | 病院、診療所又は助産所 |
ロ | 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム(要介護)等 | |
ハ | 有料老人ホーム(要介護除く)、保育所等 | |
二 | 幼稚園又は特別支援学校 | |
7 | 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの | |
8 | 図書館、博物館、美術館その他これらに類するもの | |
9 | イ | 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの |
ロ | イに掲げる公衆浴場以外の公衆浴場 | |
10 | 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場 | |
11 | 神社、寺院、教会その他これらに類するもの | |
12 | イ | 工場又は作業場 |
ロ | 映画スタジオ又はテレビスタジオ | |
13 | イ | 自動車車庫又は駐車場 |
ロ | 飛行機又は回転翼航空機の格納庫 | |
14 | 倉庫 | |
15 | 前各項に該当しない事業場 | |
16 | イ | 複合用途防火対象物(その一部が特定防火対象物) |
ロ | イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物 | |
16-1 | 地下街 | |
16-2 | 準地下街 | |
17 | 重要文化財等 | |
18 | 延長 50 メートル以上のアーケード | |
19 | 市町村長の指定する山林 | |
20 | 総務省令で定める舟車 |
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